アパート投資やマンション投資、一戸建て投資などの不動産投資をすでに行っているまたは検討している人の中には、法人化について気になっている人も多いと思います。合同会社や株式会社といった会社設立を経て、法人名義で収益物件を保有(所有)・運用するのが資産管理会社ですが、個人運用とは何が異なるのでしょうか?
この記事では、不動産投資で資産管理会社を設立するメリットとデメリット、設立が向いている人について解説します。
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目次
不動産投資で資産管理会社を設立するメリット
「ある程度の投資規模になった場合には、法人化したほうが良い」ということを聞いたことがある人も多いと思います。しかし、なぜ法人化したほうが良いのか、具体的な理由までは知らないという人も少なくありません。
不動産投資を行うすべての人が法人化したほうが良いというわけではないため、法人化の必要があるのか見極めるためにも、資産管理会社を設立するメリットとデメリットを把握しておくことが大切です。
不動産投資で資産管理会社を設立するメリットとして、以下の3つが挙げられます。
3つのメリット
・所得の分散が可能
・計上できる経費が増える
・相続税対策
それぞれのメリットについて詳しく説明していきます。
所得の分散が可能
法人化した場合、不動産投資によって得られた収入を会社から給料として家族に分配できます。従来は資産運用によって得た利益は、一括してオーナーが受け取るため、所得金額が増えることによって適用される税率が高くなるというデメリットがありました。
しかし、法人化すれば所得を分散させられるため、所得税・住民税の節税効果が期待できます。また、支払った給与を経費計上することによる節税効果が期待できます。
計上できる経費が増える
個人の場合は不動産投資に直接関係のある費用しか経費に計上できません。しかし、法人化すれば、生命保険料、社宅、社用車(ガソリン代)なども経費計上できるようになります。また、経費を計上した後に課される所得税の税率の上限も、個人と法人では以下のように法人のほうが低いです。
【個人の所得税】
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円以上195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円以上330万円未満 | 10% | 9万7,500円 |
330万円以上695万円未満 | 20% | 42万7,500円 |
695万円以上900万円未満 | 23% | 63万6,000円 |
900万円以上1,800万円未満 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円以上4,000万円未満 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
【法人の所得税】
資本金1億円以下の法人 | 800万円以下の部分の課税所得金額 | 800万円超の部分の課税所得金額 |
法人税(税率) | 15% | 23.2% |
また、個人事業主として青色申告を行った場合の損益通算、繰越控除の期間は最長で3年ですが、法人の場合は最長で10年間の繰り越しが認められている点は大きな魅力ですね。
相続税対策
資産管理会社を設立すると、相続の対象は不動産ではなく株式になります。オーナーは不動産ではなく、資産管理会社の株式を所有することになり、相続が発生した場合に課される相続税の課税対象となる財産が不動産から株式に変化します。
資産管理会社の株式は純資産価額方式で評価するケースが多いです。純資産価額方式とは、会社の資産から負債を引いて残った純資産を株式の数で割って算出する計算方法です。純資産価額方式を用いれば、株式のほうが不動産よりも評価額が低くなる傾向があります。
法改正で相続税の基礎控除額が減額になり、相続税対策が必要とされている現状を考慮すると、税金対策として相続時に備えて法人化するのも選択肢の1つといえるでしょう。ただし、必ずしも法人化が正しい選択肢とは限りません。判断が難しい場合は、税理士といった専門家に相談しましょう。
不動産投資で資産管理会社を設立するデメリット
不動産投資で資産管理会社を設立するデメリットとして、以下の3つが挙げられます。
注意ポイント
・会社の設立・維持コストがかかる
・赤字経営でも法人住民税が発生する
・資産を自由に使えなくなる
それぞれのデメリットを詳しく解説していきます。
会社の設立・維持コストがかかる
会社の設立には、登記費用や資本金といった費用がかかります。例えば、株式会社を設立手続きには30万円程度の支出が生じます。経理処理が個人と比べて複雑になるので税の専門家である税理士、法人設立には定款の作成といった各種手続きが必要なので登記手続きの専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。税理士や司法書士報酬も発生するため、設立コスト・維持コストの両方を想定しておきましょう。
赤字経営でも法人住民税が発生する
赤字経営の場合でも均等割という法人住民税が発生します。個人で不動産投資を行う場合、年間の所得がマイナスになると所得税・住民税が発生しません。しかし、法人の場合には所得に関係なく法人住民税が課されます。金額は自治体によって異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
資産が自由に使えなくなる
法人化した場合は家賃収入が会社の資産となるので自由に使えません。個人の場合は「家賃収入=自分のお金」なので自由に使えます。自由に使えるようにするには、役員報酬や配当として資産を移転しなくてはなりません。一定のルールに従って移転しなくてはならず、手間がかかる点がデメリットといえるでしょう。
不動産投資で資産管理会社の設立が向いている人
法人化はすべてに最適な選択肢というわけではありません。法人化したことが原因で、所得税が増えた、コストが増えて収益が下がる可能性もあるため、どのような人に法人化が向いているのかしっかり検証する必要があります。不動産投資で資産管理会社の設立が向いている人の条件として、以下の2つが挙げられます。
ポイント
・本業と不動産投資で得られる収入が多い人
・資産を多く有している人
それぞれの条件について詳しく紹介していきます。
本業と不動産投資で得られる収入が多い人
資本金1億円以下の法人の法人税率は、課税所得800万円超の部分は23.2%、課税所得が800万円以下の部分は15%です。個人の場合、課税所得が900万円を超えると所得税率が33%になり、法人税率を上回ります。そのため、一般的には課税所得が900万円を超えるかどうかが資産管理会社の設立を判断する1つのポイントになるといわれています。
資産を多く有している人
法人化して所得を分散させることにより、資産を分けることが可能です。その結果、自身の資産を減らし家族の資産を増やすことができます。相続税の基礎控除や他にも各種控除があることを考えると、1億円を超える資産があるかどうかが1つのポイントとなります。資産の多く保有していて何らかの相続税対策が必要という人には法人化が向いているかもしれませんね。
専門家に相談しながら法人化を判断する
土地活用や副収入の確保など、さまざまな目的で不動産投資を検討している、すでに運用している人も多いと思います。法人化することによって、経費計上できる項目が増える、資産を効率良く分配できる、相続税評価額を下げられるため、所得税・相続税の節税効果が期待できます。しかし、すべての人に法人化が向いているわけではありません。
不動産所得と給与所得を足した年収が少ない人は、法人化の恩恵を受けられず、かえって損をする可能性もあるので注意が必要です。独断で決めるのではなく、判断が難しい場合には税理士などの各種専門家に相談しながら法人化を判断しましょう。
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