不動産投資では、収益物件を購入するための自己資金が足りないケースが多いため、銀行といった金融機関等(ノンバンクを含む)から借り入れを行うのが一般的です。しかし、ローン商品の中には、担保を必要とする有担保ローンと担保を必要としない無担保ローンがあり、不動産投資ではどちらを選べばいいか分からず困っているという人も多いのではないでしょうか?
この記事では、不動産を担保とする有担保ローンの1つである「不動産担保ローン」のメリット・デメリット、利用する際に押さえておくべきポイントを解説します。※本記事には「PR」が含まれます。
目次
不動産担保ローンのメリット
カードローンやフリーローンは、無担保ローンであることが多く、資金使途も決まっていないことがほとんどです。そのため、教育資金や法人の運転資金(事業用途が制限される場合もあり)、諸費用の支払いなど、幅広い用途に利用できます。
一方、住宅ローンや不動産投資ローンは有担保ローンで、不動産の購入資金に用途が限られています。購入した不動産を担保不動産(担保物)として抵当権を設定するのが特徴ですが、不動産投資では無担保ローンと有担保ローンのどちらを利用すればいいのでしょうか?自分に合ったローンを選択するには、それぞれの特徴を把握しておくことが大切です。不動産担保ローンのメリットは以下の3つです。
ポイント
・金利が低めに設定されている
・融資限度額が大きい
・返済期間が長期に設定されている
それぞれのメリットについて詳しく説明していきます。
金利が低めに設定されている
一般的なカードローンや無担保ローンと比較すると、不動産担保ローンは低金利の傾向があります。その理由は、返済計画に支障が生じても、担保である不動産を売却すれば融資が(借入金額)回収不能に陥るリスクが低いためです。
不動産担保ローンの適用金利は、各金融機関や借入条件によって違いますが、基本的には数%台に設定されています。一般的なカードローンの上限金利は15%程度と高く、不動産担保ローンの金利が優遇されていることが分かります。5,000万円を年率2%と5%、返済期間20年で借りた場合を比較すると以下の通りです。
ポイント
・2%:返済総額6,070万5,899円、返済額25万2,941円
・5%:返済総額7,919万4,635円、返済額32万9,977円
上記のように返済負担が大幅に異なるため、返済負担を少しでも抑えたいのであれば金利設定の低い不動産担保ローンを利用した方が良いでしょう。
融資限度額が大きい
不動産担保ローンは高額である不動産の購入を目的としているため、1億円以上借りることも可能です。カードローンを代表とする無担保ローンは高額の借り入れを目的としていません。
そのため、借入限度額が数百万円程度に設定されています(総量規制という融資上限の影響も受ける)。不動産担保ローンを活用すれば、自己資金をほとんど拠出せずに不動産投資を始めることも可能です。ただし、融資額が増えることにより、返済負担が大きくなる点に注意が必要です。
返済期間が長期に設定されている
不動産担保ローンは返済期間(借入期間)を長めに設定できます。金融機関によっては30年以上の返済期間を選択できる場合もあります。返済期間を伸ばせば毎月の返済負担の抑えられるため、万が一空室が生じて家賃収入が減少しても余裕を持って対応することが可能です。
ただし、返済期間が長くなることで金利負担が大きくなるため、総返済額が大きくなるという点を考慮する必要があります。
不動産担保ローンのデメリット
不動産担保ローンは融資条件が優れているため、不動産投資を始めるのに最適です。しかし、不動産担保ローンには、以下の3つのデメリットを伴うので注意してください。
注意ポイント
・融資審査が厳しい
・返済できなければ不動産を手放すことになる
・ローンを利用する際に各種手数料が発生する
それぞれのデメリットを詳しく解説していきます。
融資審査が厳しい
不動産担保ローンは、融資額が大きいこともあり、審査に数日、融資実行までに1週間以上かかるのが一般的です。消費者金融のカードローンのように、即日融資は行っておらず、気軽にお金を借りることはできません。十分な頭金が用意できない場合は、審査落ちの可能性が高く、融資を受けられなければ不動産投資を開始できないため、まずは十分な資金を確保することが大切です。
返済できなければ不動産を手放すことになる
不動産担保ローンでは、不動産に抵当権が設定されています。融資を返済できなかった場合は、抵当権が実行されて不動産を失うことになるので注意してください。仮に、抵当権が実行された際に「売却価格-残債」がプラスであれば手元にお金が戻ってきます。反対に「売却価格-残債」がマイナスであれば一括または分割で返済しなくてはなりません。抵当権が実行されないようにするためにも、返済計画に無理がないかどうかしっかり確認しましょう。
ローンを利用する際に各種手数料が発生する
不動産担保ローンを契約する際は、さまざまな費用がかかります。例えば、事務手数料、不動産鑑定費用、印紙代(印紙税)、登録免許税、団体信用生命保険料、申込時に提出する必要書類の発行手数料などです。不動産担保ローンを申し込む際は、頭金だけでなく各種手数料も準備しておきましょう。
不動産担保ローンを利用する際に押さえるべきポイント
不動産担保ローンの利用方法を誤った場合には、大切な資産を減らす可能性がある、せっかく購入した不動産を手放さなくてはならない可能性があるので注意が必要です。また、不動産担保ローンの融資審査は厳しいため、ポイントを押さえた上で審査に臨むことが重要です。不動産担保ローンを利用する際に押さえておくべきポイントとして、以下の3つが挙げられます。
ポイント
・不動産の担保価値が審査に影響する
・返済能力の有無も審査に影響する
・融資条件の良い不動産担保ローンを利用する
それぞれのポイントを詳しく紹介していきます。
不動産の担保価値が審査に影響する
対象の不動産の担保価値が高いほど審査に有利になります。一般的に不動産評価額の60~80%が融資可能額とされています。固定資産税評価額、路線価、公示価格、基準地価、法定耐用年数、再調達価格、実勢価格など、複数の評価基準を目安に判断されるので一概に言い切れません。しかし、おおよその基準を把握しておけば、融資審査に通るかどうか判断できるでしょう。
返済能力の有無も審査に影響する
金融機関は収入に対する返済負担率などを参考に、返済能力の有無を確認します。年齢や収入、勤続年数などが主な審査項目となるほか、他のローンの借入状況も審査に影響します。過去に滞納や自己破産といった事故情報(金融事故)があった場合は審査に通らない可能性が高く、ローンを利用しての不動産投資はかなり厳しくなることを理解しておきましょう。
融資条件の良い不動産担保ローンを利用する
融資条件の良い不動産担保ローンを利用できるかどうかが不動産投資の成功を大きく左右します。例えば、金利が低いと月々の返済負担、総返済額を抑えられます。また、返済期間が長ければ、月々の返済負担を抑えられる一方、総返済額は大きくなる点に注意が必要です。複数の不動産担保ローンを比較、金融機関に相談しながら融資条件の優れた商品を選択することで、資金ショートを起こすリスクを軽減できるでしょう。
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不動産担保ローンの金利
不動産担保ローンの金利は金融機関によって異なります。一般的に、審査基準が厳しい銀行は金利が低くなりますが、審査のハードルが低いノンバンクなどは金利が高めに設定されます。前述したように、不動産担保ローンは、銀行を中心とした金融機関では「1%~9%」、ノンバンクでは「3%~15%」となっています。
各社不動産担保ローン金利(参考)
・楽天銀行の場合、年0.94%~年9.70%です。(固定金利・(5年毎見直し)
・住信SBIネット銀行の場合、年2.95%~8.9%です。(変動金利)
・東京スター銀行の場合、年0.85%~7.85%です。(変動金利)
・オリックス銀行の場合、
固定金利期間特約付変動金利型(3年固定特約型)……3.3%
固定金利期間特約付変動金利型(5年固定特約型)……3.5%
変動金利型……3.675%
・三井住友トラストL&Fの場合、年2.99%~6.40%(変動金利)
・セゾンファンデックスの場合、年2.75%~4.55%(変動金利)
※いずれも2023年7月時点
次に、不動産担保ローンの融資が受けられる期間と審査基準を見ていきましょう。
■借入期間
不動産担保ローンの期間は、金利と同様、金融機関によって異なります。一般的な借入期間は最大20〜35年です。最も多いのが25年というパターンです。
■審査基準
審査基準は、「申込者本人」と「担保となる不動産」の2つで判断されます。申込者本人の場合、以下の点をチェックされます。
審査基準(参考)
・延滞履歴や破産のような金融事故が過去にないか
・勤続年数、勤務先、年収
・完済時の年齢(多くの金融機関が完済時年齢を80歳前後としている)
・返済負担率(30%程度だと審査に通りやすい)
・連帯保証人(担保となる不動産の権利関係によって必要な場合がある)
申込者の評価についていえば、これは融資全般に共通することですが、より安定性の高い職業、高額で安定的な給与を得ている人ほど、高く評価されます。担保となる不動産の場合、以下の点をチェックされます。
【土地の価値】
土地の評価方法は、以下のような評価方法が一般的です。
メモ
・公示地価(国土交通省)
・基準地価(都道府県)
・路線価(相続税路線価:国税庁)
・固定資産税評価額(市町村)
・実勢価格
【建物の評価】
建物の評価方法は、以下のような評価方法が一般的です。
メモ
建物の評価額の算出方法=再調達価格×残存年数÷法定耐用年数
※再調達価格とは、同等の建物を建築する場合に要する建築費のこと
※法定耐用年数とは、税法上の減価償却を計算する際「その建物が何年くらい利用に耐えられるのか」を定めた年数のこと。木造なら22年、鉄筋コンクリート(RC)造なら47年など、構造や用途によって耐用年数は異なります。また、土地の評価、建物の評価共に各金融機関の独自基準があり、同じ不動産であっても金融機関によって評価が変わるケースがあります。
不動産担保ローンの必要書類・申込方法
不動産担保ローンの審査を受ける際に必要となる書類は以下のとおりです。
メモ
・本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
・印鑑証明書
・納税証明書、固定資産税納付書
・収入証明書
・不動産登記簿謄本(担保不動産が確認できるもの)
・ローン残高証明書
・商業登記謄本、決算書類、事業計画書など(法人の場合)
・公図
・地積測量図
・建物図面
・住民票、納税証明書や源泉徴収書
・納税証明書(法人の場合)
実際に融資が実行されるまでには、2週間程度はかかるのが一般的です。
不動産担保ローンはどこで借りられるのか?提供する金融機関
不動産担保ローンを提供している金融機関は、銀行、信託銀行、信用金庫や信用組合、ノンバンクなどさまざまです。ただ、取扱金額や件数から見ると、銀行とノンバンクが大きいため、この2つが主な選択肢となるでしょう。
以下では、銀行とノンバンクの特徴を見ていきます。
銀行
銀行と一口にいっても、都市銀行、地方銀行、ネット銀行、信託銀行などさまざまであり、すべての銀行が不動産担保ローンを扱っているわけではありません。特徴としては、一言でいうなら「審査は厳しいが、金利が低い」ということです。申込者本人、担保となる不動産の審査をするという意味ではノンバンクと変わらないのですが、条件の設定が銀行のほうが厳しいといえます。しかしその分、借入金利が比較的割安に設定されていることがメリットといえるでしょう。
ノンバンク
ノンバンクとは、銀行以外の金融機関のことで、預金の受け入れを行わずに、お金を貸すなどの与信業務に特化した金融機関のことを指します。ノンバンクの特徴は、「銀行の不動産担保ローンのメリットとデメリットが逆」だと考えればわかりやすいです。つまり、「審査は比較的緩いが、金利が高い」ということです。
不動産担保ローンに関するQ&A
ここからは、融資を受けるにあたって、皆さんの疑問にお答えします。
Q.不動産担保ローンを提供する金融機関を選ぶ際のポイントはありますか?
A.不動産担保ローンでは、審査の条件や借入金利にかなりのバラつきがあります。たとえ銀行であっても、ノンバンクと同じレベルの金利だったり、ローンが実行されるまでの事務手数料が高かったりすることもあります。
また、融資件数の実績がそれほど多くなく、不動産の担保価値を査定するノウハウに乏しい金融機関もあります。
したがって、きちんと情報収集し、実際に借りたことがあるユーザーのネット上の口コミや評判も参考にしましょう。また、比較サイトのなかには金融機関からお金をもらってランキング上位にしているところも可能性としてはあるため、比較サイトを見る際にも複数比較をすることをおすすめします。
Q.不動産担保ローンの審査に通りにくい人の条件は?
A.以下の条件に当てはまる人は通りにくいといえるでしょう。
・書類に不備がある
・申込者本人の信用情報に問題がある
・住宅ローンの残債が残っている(ただし「住宅ローンや車のローンと併用可能でしょうか?」に詳しく記載していますが、不動産評価額に余力があれば、審査に通る可能性は十分にあります)
Q.仮審査は通りましたが、本審査で落ちることはありますか?
A.残念ながら十分にあります。仮審査はあくまで最低限の項目を審査しただけであり、本審査ですべての要件を精査した結果、落ちることはありえます。
Q.不動産担保ローンと不動産投資ローンの違いはなんですか?
A.「所有不動産を担保に入れてお金を借りる」という点は共通していますが、不動産担保ローンは資金使途が原則自由な不動産担保型「フリーローン」となります。一方、不動産投資ローンは所有するアパートやマンションなど「収益物件を担保に不動産賃貸業の事業資金を受けるためのローン」となります。
Q.不動産担保ローンは投資目的でも利用できますか?
A.前項で説明した通り、さまざまな資金使途に使えるため、不動産担保ローンを投資の資金に充てることも可能です。ただし、一部「事業性資金には使用不可」と定めている金融機関もあります。
Q.自己資金が少なくても融資してもらえますか?
A.まとまった自己資金は必要ありませんが、諸費用が発生します。融資の実行日に2%~3%の事務手数料が融資額から差し引かれて振り込まれます。その他、印紙代、振込手数料、登記費用(実費)が必要になります。
Q.住宅ローンや車のローンと併用可能でしょうか?
A.基本的に併用は可能です。
住宅ローンを組む際には、住宅ローンを融資する金融機関が、該当不動産に対して第一抵当権を設定します。万が一、債務者が返済不可能になったら、金融機関はその抵当権を行使することで、担保不動産を売却して債権回収します。
そのため不動産担保ローンを併用するためには「住宅ローンの返済がある程度進んでいること」が第一の条件となります。金融機関によって「ローン残高が購入時の約6割以下」といった具体的な条件があるケースもあります。条件に当てはまれば、第二抵当権であっても不動産担保ローンを受けることができます。
Q.一括返済や借り換えは可能ですか?
A.一括返済は可能ですが手数料がかかる場合があります。また、不動産担保ローンを使って借り換えをすることもできます(条件は各金融機関によって変わります)。不動産担保ローンからだけでなく、無担保ローンや住宅ローンからの借り換えであっても、返済負担の軽減や資金繰りの改善に期待できる可能性があります。
Q.両親名義の不動産を担保にした場合、両親以外の保証人が必要ですか?
A.この場合、原則両親のみ連帯保証が必要です。
不動産担保ローンは不動産投資に必須
無担保ローンは比較的気軽に利用しやすいというメリットがある一方、融資限度額が低く、返済期間も短い、金利が高いというデメリットがあります。有担保ローンである不動産担保ローンは審査が厳しいものの、融資条件が優れているため、賃貸経営を始めようとしている人の強い味方です。
しかし、不動産担保ローンを利用する際は借入額が大きく、収益が悪化した場合は返済計画に支障が生じ、物件を手放さなくてはならない可能性もあるので注意してください。自分で判断が難しい場合は、金融機関に適宜アドバイスを求めましょう。
\融資実行までがスピーディー/