賃貸アパート経営や賃貸マンション経営などの賃貸経営を始めれば、賃貸物件の運用によって得られた家賃収入をすべて自由に使えると思っている人も多いのではないでしょうか?しかし、実際は賃料収入から支出を差し引いて残った分しか自由に使えません。
特に修繕費用が支出の大半を占めることになるため、どのくらいの修繕費用がかかるのかを事前に把握しておくことが大切です。この記事では、アパートの修繕費の目安、修繕費用を経費に計上できるかどうかなどについて解説します。アパートの修繕費について詳しく知りたい方の参考になれば幸いです。
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目次
アパートの修繕費の目安【原状回復・補修】
アパート経営では、入居者が安心して暮らせるように快適な生活空間を確保しなくてはなりません。そのため、エアコン、給湯器、配管、給水ポンプや排水ポンプといった設備に不具合が発生した場合には、適宜賃貸物件のオーナーがそれらを修理する必要があります。突発的に発生する修繕には、原状回復と補修の2種類があります。それぞれの修繕費の目安について詳しく説明していきます。
退去時に行う原状回復
入居者が退去する際には、原状回復義務を負います。原状回復義務とは、貸し出していた部屋を元の状態に戻すための修繕工事やハウスクリーニングにかかる費用を入居者が負担するということです。基本的には入居者から受け取っていた敷金や退去費用を充当します。
しかし、経年劣化や汚れなどを原因(通常消耗で借主に責任がない)とするものにかかる修繕費用は原則貸主負担になるとガイドラインに定められています。貸主負担、借主負担となる具体的な事例は以下の通りです。
メモ
貸主負担:クロスや畳の経年劣化(変色)、家具設置によるフローリングやカーペットのへこみなど
借主負担:適切な管理を行わなかったことによる焼け焦げ・染み・カビ、家具運搬でついた傷など
余程の過失がない限りは、壁紙や設備などの原状回復にかかる費用を入居者に請求できません。そのため、原状回復費用の費用相場として、数万円~数十万円程度を想定しておく必要があります。
補修
設備に不具合が生じた、事故や災害などで破損した部分などには適宜修繕を行います。火災保険や地震保険などの各種保険に加入している場合や保証が付いている場合には、修繕費用を保険金で補えるので費用負担が生じないまたは一部のみとなります。コンロや換気扇の故障、トイレやキッチンの水漏れ、雨漏りなど、損傷程度や工事内容によって修繕費が大きく異なる点に注意が必要です。
補修にかかる費用には敷金を充当できないため、万が一に備えて普段から数万円~数十万円程度の資金を貯めておくことが大切です。補修にかかる金額を軽減するために適切な補修を行わなかった場合には、頻繁に故障が生じて入居者満足度が低下して退去者が増える、被害拡大により支出が大きくなるおそれがあるので注意してください。
アパートの修繕費の目安【予防修繕・大規模修繕】
アパート経営では、突発的な不具合が発生するリスクを少しでも軽減するために定期的なメンテナンスを必要とします。定期的に行う修繕は、予防修繕と大規模修繕の2種類です。それぞれの修繕費の目安について詳しく解説していきます。
予防修繕
耐用年数が近づいた設備の入れ替え、シロアリ対策、室内リフォームなどは、定期的・周期的に行うのが望ましいとされています。その理由は、実際にトラブルが発生してからでは修繕にかかる費用が大幅に膨らむ可能性があるためです。
また、予防修繕には空室対策のための模様替えや部分的なリフォームなども含まれます。1年~数年に1回程度、数万円~数十万円程度の支出を想定しておく必要があります。戸数の多いアパートや工事をまとめて業者手配にかかる費用を抑えたい場合には、一度の修繕費用が100万円を超えることもあるので事前に資金を確保しておきましょう。
大規模修繕
大規模修繕とは、経年劣化による建物全体のダメージに対し周期的に行う修繕です。屋根塗装、葺き替え、ベランダ塗装や外壁塗装(防水工事)、タイルの貼り替えなどが大規模修繕に該当します。
10年~15年に1回程度と工事は頻繁に行われませんが、数百万円~数千万円程度を想定しておく必要があります。耐震性に問題がある場合には、耐震補強工事も含むことによって、さらに工事費用が高額になるため、資金不足に陥らないように事前に資金計画をしっかり立てておきましょう。
アパートの修繕費は経費に計上できる?
アパートの修繕費を経費に計上することで、所得税を少しでも抑えたいと考えている人も多いと思います。しかし、修繕費をすべて一括で経費計上できるわけではありません。経費計上を誤った場合、税務署から指摘が入り、場合によってはペナルティを科される可能性があるので注意してください。アパートの修繕費と経費の関係を詳しく説明していきます。
一定の条件を満たす修繕費は経費計上ができる
先述の通り、賃貸物件の修繕に要した費用でもすべてを一括で経費として計上できるわけではありません。修繕費を経費として一括計上するためには、以下の条件を満たす必要があります。
メモ
・3年以内の周期で発生する支出
・通常の維持管理に必要な支出
・1回の工事にかかる費用が60万円未満、もしくは前期末の取得価格の10%以下
上記に該当する修繕費であれば、一括で経費に計上することが可能です。所得税の節税効果を高めるには、更新料や礼金などで収入の増えた年にうまく修繕をずらすのが重要なポイントといえるでしょう。
資本的支出と見なされる修繕費は経費に一括計上できない
資本的支出とは、マイナスをゼロに戻す修繕とは異なり、付加価値を与えるような修繕のことです。例えば、以下のような修繕については資本的支出と見なされる可能性があります。
注意ポイント
・耐震補強工事、屋根の防水加工、窓サッシやインターフォンの交換など
資本的支出は経費に一括計上することができず、減価償却費として複数年にわたり経費計上します。経費計上は専門的な知識を必要とする部分が多いため、独断での判断が難しい場合、専門家である税理士に相談しましょう。
ただし、税理士に相談することには、節税に関するアドバイスや確定申告のサポートなどを受けられるというメリットがある一方、費用がかかるというデメリットがあります。メリットとデメリットの両方を総合的に判断しながら相談するかどうかを検討しましょう。
収支計画をしっかり立てることが大切
土地活用、節税対策、老後の生活費の確保など、さまざまな目的でアパート経営に興味を抱いている人も多いと思います。しかし、アパート経営を行えば、誰でも継続的・安定的な家賃収入が得られるわけではありません。
また、家賃収入を得られたとしても、修繕費や不動産管理会社に支払う管理費を拠出しなくてはなりません。資金不足が原因で必要な修繕を行うことができなかった場合は、建物の資産価値が低下する、入居者満足度が低下して収益性が低下する可能性があります。適切なタイミングで修繕を実施するためにも、収支計画をしっかり立ててからアパート経営に臨みましょう。
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