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今話題の「リースバック」で高齢者に急増中のトラブルとは?|契約前の注意点を解説|不動産投資セミナーナビ

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「持ち家を売却しても、同じ家に住み続けたい」――そんなニーズに応える不動産取引「リースバック」が近年注目されています。しかし、特に高齢者を中心に活用が広がる一方で、トラブルの相談件数が急増しており、国民生活センターは注意を呼びかけています。

そもそもリースバックとは?

リースバック(sale and leaseback)とは、自宅を不動産業者に売却したあとも、その物件に賃貸契約で住み続けられる仕組みです。住宅ローンの返済から解放され、固定資産税の支払い義務もなくなり、まとまった資金を確保できる点がメリットとして挙げられます。しかしその仕組みゆえ、契約の中身を理解していないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあるのです。

リースバックの基本の流れ(手続きのステップ)

1)不動産会社などに自宅を売却
・現金化される(住宅ローン残債の返済などに利用可能)
2)売却後、買主と賃貸契約を締結
・元の家に「借主」としてそのまま住む
3)毎月の家賃を支払いながら居住
・固定資産税や修繕費の負担者は契約内容による
4)契約期間満了後は退去 or 再契約(※定期借家かどうかで大きく異なる)

実際にあった高齢者のトラブル例

2024年秋ごろ、関西地方に住む70代後半の女性が地元の消費生活センターに相談を寄せました。この女性は自宅である戸建て住宅を1200万円で売却し、月額10万円の家賃で住み続ける契約を結んだつもりでしたが、実は契約の中身は「定期借家契約」でした。この「定期借家契約」の特性上、契約更新ができず、2年後には退去を求められてしまいました。

「こんなつもりではなかった」と女性は憤りますが、定期借家契約は、期間満了後に原則として契約更新ができないため、安定した居住を望む高齢者には不向きな契約形態といえるため注意が必要です。

相談件数は5年で12倍以上に

国民生活センターによると、リースバックに関する相談件数は2019年度の19件から2023年度には227件と、わずか5年で12倍以上に増加しました。特に、定年を迎えた70代以上の高齢者が相談者の大半を占めています。

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定期借家契約が約5割、買い取り価格も相場以下

国土交通省が2024〜2025年に実施した調査によると、不動産業者のうち、リースバック物件の約48%が「定期借家契約」。また、買取価格についても「周辺相場の6〜7割に設定している」と回答した業者が52%にのぼりました。

その理由として「リースバック中は物件を自由に再販売・運用できない」ことが挙げられますが、これは売主(特に高齢者)にとっては非常に不利な取引条件ですので注意が必要です。

修繕費・クーリングオフという名の落とし穴

契約トラブルはこれだけに留まりません。

注意ポイント

1)修繕費の負担
 通常の賃貸契約では大家(家主)が修繕費を負担しますが、リースバックでは借り主(元の所有者)が負担するケースもあります。
2)クーリングオフの非適用
 訪問販売などでは契約後一定期間であれば解除できる「クーリングオフ」が適用されますが、リースバックは対象外。そのため一度契約すると取り消すのが極めて困難です。

実際、調査では「十分な説明をしていない」とする業者が約4割にのぼっていることから、十分に注意が必要です。

対応策と今後の課題

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国土交通省は2022年にリースバック取引のガイドラインを策定し、注意点や契約時チェックリストを整備しました。また、高齢者保護の観点から、以下のような対策も求められています。

対応策と今後の課題

1)クーリングオフの適用範囲を拡大する
2)買取価格に対する客観的根拠の提示を義務化する
3)契約内容の丁寧な説明を事業者に義務づける

安易な契約に注意、慎重な判断を

老後の生活資金確保の手段として有用なリースバック。しかし、「住み続けられる」と安易に判断して契約すると、大きな損失や居住喪失につながる恐れがあります。国民生活センターは「メリットだけでなく、契約内容のデメリットや仕組みを十分に理解し、慎重に判断してほしい」と強く呼びかけています。

また、不動産に詳しい弁護士の解説によると、「リースバックは住環境が変わらないため、周囲が異変に気づきにくいことが散見される。問題が表面化しにくい構造的なリスクがある。」と警鐘を鳴らしています。高齢世代とその子供たちとが、普段から疎遠にならないようコミュニケーションの中から ”異変” に気づくような関係づくりが欠かせないのではないでしょうか。

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